相続が発生し、被相続人(亡くなられた方)の銀行や証券会社の口座を解約して払戻しを行う際の手順や必要書類について知りたい方も多いのではないでしょうか。
今回の記事では、相続による預貯金の払戻し手続きの方法について解説します。
目次
必要な書類
1.被相続人の出生から死亡の記載がある戸籍謄本と相続人の現在戸籍
こちらは、判明している相続人のほかに、隠し子などの他の相続人がいないかを確認するための書類です。そのため、子どもをもうけることが可能な年齢以降の記載がある戸籍を取得すれば足りるとされていますが、実務上は出生までさかのぼって取得することが多いです。
また、死亡の記載がある戸籍について注意したい点として、被相続人が亡くなった後、期間を空けずに請求してしまうと、死亡の事実がまだ反映されていない場合があることが挙げられます。被相続人の戸籍は、本人が亡くなってからおおむね2週間程度経過した後に請求するのが望ましいとされています。
そして請求の際には、念のため戸籍住民課の担当者に「死亡の記載がある戸籍をお願いします」と伝えておくと安心です。なお、戸籍については、金融機関は原則として原本の提出を求め、調査が完了するまで返却されません。そのため、被相続人が複数の預金口座を保有していた場合、一つの金融機関で戸籍の調査が完了するまで、他の金融機関での手続きを進められない状況になることがあります。
これを避けるため、あらかじめ法務局で「法定相続情報一覧図」を作成しておくことをおすすめします。法定相続情報一覧図は何通でも作成可能で、費用は無料です。
2.相続人の印鑑証明書
こちらは、相続人の人数に関係なく、ほぼすべての金融機関で提出を求められる書類です。印鑑証明書は発行から6か月以内のものを求められるため、以前取得した印鑑証明書を見つけて「お、これを使おう!」と思っても、発行から6か月を経過している場合は、再提出を求められ、手続きが遅れてしまうことがありますので注意が必要です。
3.遺言書(被相続人が遺言書を遺していた場合)
遺言書がある場合、原本の提出を求められることがほとんどです。遺言書が公正証書遺言であれば、そのまま金融機関に提出すれば問題ありません。
一方、自筆証書遺言の場合は、家庭裁判所での検認手続きが完了していなければ、金融機関では受け付けてもらえませんので注意が必要です。
4.遺産分割協議書(相続人が複数いる場合)
この書類は、相続人全員で遺産の分配方法について話し合い、合意に至ったことを証明するための書類です。相続人全員の署名および実印の押印が必要となります。
5.家庭裁判所の審判書等(家庭裁判所に仲裁に入ってもらった場合)
相続人間で話し合いがまとまらず、家庭裁判所に仲裁に入ってもらい、相続に関する争いが解決したことを証明する書類書類になります。
以上を踏まえると、預貯金の払戻し手続きに必要な書類は、以下のとおりです。
被相続人の出生から死亡までの戸籍および相続人の戸籍
相続人の印鑑証明書
遺言書(被相続人が遺言書を遺していた場合)
遺産分割協議書
家庭裁判所の審判書等(家庭裁判所に仲裁に入ってもらった場合)
その他、専門家に依頼したり相続人の中に相続放棄をした人が場合には必要書類が増えますが、遺言書も相続人間に争いも無ければ①②④の書類が払戻し手続きで用意するべき書類となります。
金融機関への連絡方法
被相続人が亡くなったことを金融機関に伝えることで、預貯金の払戻し手続きが進みます。
ここでは、連絡方法について解説します。
1.電話で連絡する場合
電話で連絡する場合は、被相続人が口座を開設していた金融機関の支店へ直接連絡する方法が最も早いでしょう。亡くなったことを伝えた後の流れは金融機関によって異なりますが、今後の手続きを郵送で行うか、窓口で行うかを選択することになります。
2.インターネット(Web)で連絡する場合
メガバンクをはじめ、多くの金融機関では、インターネット(Web)から相続手続きを行うことが可能です。対象の金融機関がWeb手続きに対応しているかを確認するには、「〇〇銀行 相続」などのキーワードで検索すると、相続手続き専用ページへ案内されることが多いでしょう。Webで手続きを開始した場合でも、その後の流れは電話連絡の場合と同様です。
注意点
いずれの方法で連絡した場合でも、金融機関に被相続人が亡くなった事実を伝えた時点で、口座は凍結されます。そのため、被相続人の口座から葬儀費用などを引き出す予定がある場合は、特に注意が必要です。
まとめ
今回の記事では、相続による預貯金の払戻し手続きの方法について解説しました。
金融機関によって異なりますが、書類が受理され、不備がなければ、2週間から1か月程度で手続きが完了し、相続人の口座へ預貯金が払戻されるのが一般的です。
預貯金の払戻し手続きは、書類がそろえばそれほど難しいものではありませんが、被相続人が複数の口座を保有していた場合、書類作成に不慣れな方にとっては大きな負担となることもあります。
当事務所では、相続手続きに関する業務を専門に取り扱っています。相続による預貯金の払戻し手続きについてご不明な点がある方、また、ご自身での手続きが難しいと感じられた方は、お気軽に当事務所までご相談ください。
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