大抵の方は戸籍謄本を請求する機会は日常ではあまりないと思われます。しかし相続が発生し、相続手続きに必要な相続人の戸籍収集をいざ始めてみると、両親や祖父母・子供達の戸籍は取得できたのに、兄弟姉妹の戸籍を請求すると役所の戸籍請求の担当者さんに「兄弟姉妹の戸籍は委任状が無いと請求が出来ません」と拒否され、戸籍収集が行き詰ってしまった方もおられるのではないでしょうか?
そして困り果てて専門家に依頼をすると、拍子抜けするほどあっさり必要な戸籍を揃えてもらい、その後の相続手続きを進めることが出来たという方も大勢おられるはずです。 では何故、弁護士・司法書士・行政書士等の士業が戸籍を早く収集できるのかと言えば、戸籍に関する知識が深いことは勿論、それに加えて「職務上請求書」という書類が使用できるからです。今回は職務上請求書について主に行政書士を例にご紹介させて頂きます。
職務上請求書とは?
戸籍は縦の関係(父母・祖父母・子・孫などです。)に関する物は役所で請求する際に担当者に本人確認書類を提示し、手数料を支払えば簡単に取得できます。とはいえ冒頭でも述べました通り、横の関係(叔父・叔母・兄弟姉妹です。)の戸籍は、例えば弟さんの戸籍を取得したい場合、弟さんご本人から委任状をもらわなければならず、必要な人間ごとにその都度委任状をもらわなければなりません。対象の人間が遠方にお住まいだった場合は委任状を郵送でやり取りするだけで時間を割かれますし、ましてや戸籍収集に非協力的な親族が出てきた場合のストレスは大変な物でしょう。
しかし8士業と呼ばれる弁護士・司法書士・弁理士・税理士・土地家屋調査士・社会保険労務士・海事代理士・行政書士は職務上請求書を用いて請求対象者の戸籍や住民票等の書類を対象者の委任状無くして取得できるのです。職務上請求書は個人の本籍地は勿論、戸籍の附票を取得すればその個人が現在どこに居住しているかも分かってしまう強力な物だけに、もちろん正当な理由も無く使用することはできません。不正な動機を持った人間に頼まれ「ハイ、了解しました!」と職務上請求書を濫用し、不正使用が発覚した場合、刑事罰の対象になりかねません。(残念なことですが、職務上請求書の不正使用で士業が逮捕されたケースは存在します。) 各士業にはそれぞれの業務の範囲に限り職務上請求書の使用が許されているのです。
例えば行政書士の場合
- 官公署に提出する書類の作成に必要な場合 (産業廃棄物収集運搬業や建設業許可・古物商許可申請等)
- その他の権利義務または事実証明に関する書類の作成に必要な場合 (相続手続きに必要な遺産分割協議書作成・法定相続情報等)
今回は士業の職務上請求書についてお話をさせて頂きました。当事務所では遺産分割協議書・法定相続情報の書類作成をご依頼頂ければ相続手続きに必要な戸籍の収集を併せて行います。相続手続きが発生し、戸籍収集・相続手続きでお困りの方、ご相談下さい。