あるご家族がこんな話し合いを行ったとします。
父親「すまないが私の相続財産は全て私の世話をしてくれた二男にあげたいんだ。長男のお前は相続放棄してくれないだろうか?」
長男「分かったよ、相続放棄する。」
父親「そうか、有難う。ではこの念書に署名し、実印を押してくれないか?」
長男「いいよ。」
念書
私は父○○との誓約により父の財産を相続せず、相続放棄を致します。
令和〇年〇月〇日
長男○○ 印
こうして長男は父の意向に従い、上記の書類に署名・捺印しました。果たしてこの念書は法律的に有効なのでしょうか?
父親にとっては残念ですが法律上、何の効果もありません。なぜなら法律上、被相続人(亡くなった人)の生前に相続放棄をすることは認められていないからです。これは相続人となるべき人が(以後、相続人と書きます)、強迫などで相続放棄を強いられることを防ぐためでもあります。
例えば財産を遺す人に気に入らない相続人がおり、その人に対し「俺はお前が気に食わないから財産を遺したくない。だから相続放棄しろ!」
この主張がまかり通ると、民法で定められた相続人の権利は一方的に奪われてしまいます。相続財産について相続するのかしないかは、財産を遺す人が亡くなった後で相続人が判断するべきというのが法律の趣旨なのでしょう。
そもそも相続放棄は相続発生後(つまり、財産を遺す人が亡くなった後)に家庭裁判所に申述(申請とお考え下さい)しなければ法律効果は一切ありません。もちろん、これを財産を遺す人の生前に相続人が行っても家庭裁判所に門前払いされるでしょう。
まとめ
今回の記事では財産を遺す人の生前に相続放棄をしても無効だというお話をさせていただきました。相続人に相続放棄を約束させる念書を書いてもらっている人の話ですが、結構、耳にします。お話ししました通り生前の相続放棄は無効ですので、どうしても望む人に財産を遺したいのであれば遺言書を作成しておくべきでしょう。
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