ご主人とのお別れの葬儀も終わり、役所等への手続きも落ち着き、Aさんは相続手続きに入ることにしました。亡くなったご主人の財産の調査や相続人を確定させるべく息子さん達のサポートを受けながら、親族への連絡や戸籍を集めようやく相続人が確定し相続人全員の連絡先も調べ上げたAさん。息子さんからプリントしてもらった相続人の連絡先を見ながら相続人へ直接電話で話したり手紙を出すなどして相続人と連絡を取ります。中には初めて話をした親族もいましたが皆さん快く相続に協力してくれるという返事を頂き、Aさんの心中に安堵感が溢れてきました。しかし後一人、Cさんというどうしても連絡の取れない相続人がいたのです。連絡の取れないCさんはAさんのお住まいからは遠方に住んでいます。仕方なくAさんはCさんに何度も手紙を出してしばらく待ってみましたが、待てど暮らせど何の返答もありません。嫌な予感がしてきました。
Check Point !
「取り敢えず連絡が取れる人達で相続を終わらせて、Cさんには事後承諾みたいな形でいいかな?」と思いたくなりますが、遺産分割協議書を作成して法務局や金融機関に提出しても絶対に受理されません。何故なら相続手続きは相続人全員の同意がないと成立しないからです。つまり相続人の中に、ひとりでも署名、実印での捺印がない場合、遺産分割協議書は法的に一切無効になってしまいます。
そこでAさんは息子さんと共にCさんに直接会いに行くことにしました。Cさん宅に訪れるとポスト口はぎゅうぎゅうに郵便物が詰め込まれています。恐らくAさんが出した手紙もこの中に入ったままでしょう。まさか家の中で孤独死しているのでは!?泡を吹いたように相続人宅のドアをノックするAさんと息子さん。その様子に気付いた近所の人が声をかけてきました。
「Cさんなら認知症が悪化して、半年程前に地域包括支援センターの人達が施設に入所させたよ」
えっ、Cさんは認知症!
Check Point !
遺産分割協議は法律行為であり、意思能力を欠いた人は遺産分割協議に参加できません。Cさんの様に認知症の方は、法律上意思表示が欠けた人とみなされるため、遺産分割協議には参加することができません。
とにかくCさんに会ってみようとAさんは息子さんと二人でCさんの入居している施設を訪れることにしました。包括支援センターの職員さんに事情を話すと、Cさんは既に裁判所へ後見人の申し立て中で、間もなく審判が下りるでしょうとのことでした。
Check Point !
遺産分割協議を有効に進めるためには、判断能力のない相続人Cさんの代わりに協議に参加できる「成年後見人」が必要となります。裁判所に成年後見人の申し立てをし選任してもらいます。原則、親族は勿論、知らない他人を後見人候補者として申し立てをすることは可能ですが、相続人などは選任される可能性は低いでしょう。
認知症の方が相続人の中にいるケースは今後増えていくことでしょう。ここで問題になるのが、遺産分割協議を早く進めたいがために後見人の選任をすることです。後見人がやるべき事柄は多く、面倒に思うことも少なくありません。それは相続が終了しても被後見人が亡くなるまで続きます。ですから、後見人を誰にするかは大変重要になります。
認知症などで成年後見の申立てが必要な場合は、認知症の方のお住まい周辺の専門家に相談されることをお勧めします。相模原市周辺にお住まいの方は是非当事務所にご相談下さい。ご家族やご親族にとって最善の方法をお探しします!