そろそろ心身ともに衰えを感じている方、年齢も若く健康そのものだけど、万が一自分に何かあった時の事を考えている方、それらの方達は自分がいなくなった後、大事な家族の将来に備え遺言書を作成することをお考えになるでしょう。ご承知の通り遺言書とは、遺言者の希望する人に身分行為や財産等を承継させる為の「書類」です。そしてこの遺言書という書類に法的効果を持たせる為には法が定めたルールに従って作成しないと無効になります。
絶対に記載していなければならない事項
- 遺言者本人の「自筆」であること(ワープロ、パソコン等での作成は無効)
- 作成日付の記載がある事(平成30年1月吉日等、日付が判明できない物は無効)
- 遺言者本人の署名、押印があること(印は認め印や拇印でも可)
- 共同遺言の禁止(夫婦が二人で遺言書を作成する等)
記載ミスや遺言内容を変更したい時、訂正はできますが、やはり厳粛なルールに従って訂正しないと無効になります。では実際に何点かの遺言書を紹介します。
私の所有する土地建物の不動産は全て次女の美奈子に相続させます。
平成30年1月10日
中本 タエ子印
記事を書いている私が「これ、大丈夫かな?」と不安になるほどシンプルですが大丈夫です。この遺言書は法的要件をクリアしています。
僕に万一のことがあった場合、○○銀行○○支店の僕の預金口座300万円は推定相続人の父、正則ではなく姉、由香里に相続させる。
平成30年1月8日
清水 正孝印
私の死後、私の所有する預貯金、土地建物の不動産の全てを妻 伸子に相続させる。
平成30年1月14日
大野 健一印
3つの記載例を紹介しましたが、シンプルでもルールに従っていれば問題ありません。しかし、仮に貴方が相続人の一人であり、これらの遺言書を読んで財産をもらえないことが分かったらどのような反応をとるでしょう?「遺留分制度」という遺言書があっても侵すことのできない相続人の権利は存在しますが、その権利を行使すれば、被相続人の希望通りに財産の承継が行われないばかりか、相続争いにまで発展する可能性もあります。ではどうすれば被相続人の思いを残された人達に伝えられるのでしょうか?そこで登場するのが「付言事項」です。
法的効果を持つ遺言事項に対し、法的効果の無い遺言者の願いを込めた文面が付言事項です。付言事項で遺言者の思いを相続人に伝えることで、相続人同士のトラブルを防ぐ効果が期待できます。
次女の美奈子はアルツハイマー認知症のお父さんの面倒を、10年近く看てくれました。お父さんの死後は、足の悪い私の世話を一生懸命してくれています。そのせいでいい人がいたにも関わらず婚期を逃すことになりました。美奈子は私達の為に犠牲になったのです。私が亡くなった後、独り身の美奈子の老後が心配でなりません。私の財産と言えるのは、自宅の土地と家だけです。この不動産を美奈子が相続し、売却して老後の生活に役立ててくれればと遺言書を作成しました。どうかお母さんを安心させて下さい。他の兄妹達にもお母さんの気持ちが伝わってくれることを切に願います。
僕は心身共に健康ですが、万一の事があった場合を想定し、遺言書を作成しました。独身の僕が亡くなった場合、本来ならば相続権があるのはお父さんなのですが、○○銀行に預けてある僕の預金300万円を姉さんに相続してもらいます。お父さんが憎くてこんなことをするのではなく、一緒に生活している僕から見ても最近のお父さんは心配なのです。このまま法定通りにお父さんに僕の財産を相続してもらっても、お父さんのお金が悪い人に騙し取られるのではないかと不安です。ご承知の通り、お金に厳しいけど決してケチではない姉さんなら、もしお父さんがひとりで生活もできないくらい心も体も弱ってしまっても、僕の残した財産でお父さんを助けてくれるでしょう。だからお父さん、悪い方に考えないで下さい。姉さんと僕を人に対して気遣いができる立派な大人に育ててくれて有難うございました。由香里姉さんにはちょっと迷惑かけるけど、お父さんをよろしくお願いします。
私は先月、○○病院の医師に余命半年と宣告されました。覚悟はしていたのでそれほど恐ろしくはないのですが、私が亡くなった後、病気のせいで物事の判断ができなくなった妻 伸子のことだけが気がかりです。三人の息子達には大変申し訳ないのですが、私の死後、預貯金の全てと不動産はお母さんに相続させます。厳しい時代に三人とも家庭を持ち、生活は決して豊かではないことを父は痛いほど承知しています。しかし君達のお母さんは、私の遺した財産がないと生きていくことができないのです。無慈悲な父親だと罵られても仕方ないことを遺しますが、まだ元気だった頃の優しいお母さんとの思い出が君達の心に浮かぶことを祈っています。
まとめ
この様に機械的に遺言事項だけを記載したものではなく、付言事項で思いを残すことにより、ぐっと温かみのある遺言書になり、遺言者の望む形で財産を承継させるだけではなく、残された人達の為にもなることでしょう。相続人同士で話し合い、財産の分配を決める遺産分割協議が不要、または簡略化できるので相続が円滑に進行できます。結果、相続人の金銭的、精神的負担を軽減することに繋がります。また、法定相続とは違い、相続人が限定されるので相続争いに発展するリスクが低くなります。遺言者の生存中に推定相続人(相続人になることが推定される人)と話合いをしておけば、更に良い方向にむかうはずです。相続トラブルは相続財産の額はあまり関係ないようで、それよりも親子、兄弟姉妹関係の悪さ、思い入れのある土地が欲しい等、人間の感情により発生することが多いようです。
残された人達が穏やかな生活を送れる様、遺言書には付言事項を記載されることをおすすめします。
願いを込めた付言事項を遺言書に残したいとお考えの方、是非、田端洋海行政書士事務所にご相談ください!
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